ローマ時代にその起源をおく銀の道 (Ruta de la Plata)は、紀元前より商人、鉱夫、牛追い、そして軍人たちが歩いたヒホンからセビーヤにいたる道である。
銀の道はタルテソス人、カルタゴ人、ローマ人、アラビア人等がスペインを南北に移動する機軸となった縦断ルートで、歴史、芸術、自然、料理、民芸等のバリエーションに富む魅力的な道のりです。
古代、イベリア半島の西部を北と南に結ぶビア・ラタ (幅の広い道)として作られた銀の道 (RutadelaPlata)。 その後、家畜飼育者 (Mesta)の組合などによって夏草や冬草を求めて群れを追うための、牛追い道の一部として使用されてきた。
このルートは、昔ながらのたたずまいを今に伝え、変化に富んだ風景が堪能できます。 歴史的建造物や考古学上重要な様々な歴史的遺産は、稀に見る広大な野外博物館で、その中には歴史重要文化遺産都市や歴史・美術保存指定区域があります。
そして文化交流や商取引の動脈として発達し、鉄道の出現によりさらに発展。 今日、国道N-630とその支線道路に沿って延びるこの道は、美しい景観と沿道の魅力ある町々を堪能できる格好の旅行ルートとなっています。
南から北に向かう時、このルートの起点となるのはアンダルシア屈指の都市であるセビーヤ。 スペインで最も大きいカテドラル、イスラムの手になるヒラルダの塔、ムデハル様式の美しいアルカーサル、さらにはサンタ・クルス街やマリアリレイサ公園などの魅惑的な旧市街、この都市は異なる文化の融合とその地理的な恩恵により、スペインが誇る町のひとつといえる。
1992年には万博も開催された。 セヒージャからローマ人の古代都市の遺跡を通り、このルートはサフラ、アルメンドラレホ、そしてメリダヘと達する、クアディアナ川の川岸に立つこの都市はローマ・ヒスパニガとも称せられ、スペイン最大のローマ遺跡が残っている。
円形劇場およびローマ劇場、ローマ博物館といった考古学的見所かへ町の中心部に位置している。 続いてこの道は、15~16世紀の佇まいをそのままに残す城壁の町カセレスに到着。 次の町プラセンシアも、見事なカテドラルと中世の街並を残している。
さらに、ユダヤ人街のあるエルバス、その宮殿や16世紀の教会が重要な歴史的価値を持っているベハルなどが連らなっている。 ここから道は、ヨーロッパ屈指の大学のあるサラマンカヘと向かう。
この都市の旧市街の美しさはスペインでも定評のあるところ。 マヨール広場、新旧カテドラル、貝の家、そしてサラマンカ大学は必見である。 さらに北に進むといくつもの教会や中世の宮殿があり、ロマネスク建築の宝庫と言われるサモーラに着く。
そして小麦畑やいくつかの小さな湖を見やりながら行くと、ベナベンテ、そしてアストルガが待っている。 ここには優美なカテドラルと、ガウディの手による斬新な司教館がある。
かつてのレオン王国の首都であったレオン。 ここには素晴らしい建造物が3つある。 サン・イシドロ教会は8世紀ロマネスク様式の作品。 旧サン・マルコス修道院は、かつてサンティアゴ巡礼者たちの宿として開放されていた修道院で、現在はパラドールになっている。
そしてカテドラルは、美しいステンドグラスのあるゴシック建築の代表作である。 またレオンには典型的な旧市街があり、伝統料理を昧わうのも楽しみである。 さらに進むと、歴史的街道カンポマネス、ポラ・デ・レナが、アストウリアス地方に入ったことを知らせてくれる。
そしてミエレスを経由してアストウリアス州の州部であるオビエドヘ。 ここにも美しい旧市街があり、内乱により傷ついたカテドラルがある。
このコースの最終地点はヒホンである。 街には美術館やいかにもスペインらしい通りがあり、また海にも近いことから旅行者に人気のあるところである。
全行程800kmにおよぶ銀の道 (RutadelaPlata)-それはスペインの景色、文化、料理を楽しむ旅。 そして、スペインの歴史的な魅力であるその多様性や光と影そのものを体験する、人間探求の旅ともいえるであろう。
■サフラ
バダホス県の中心に位置するサフラ市は、商業の盛んな白い村ルートの最初の街。 ほとんどの建物が歴史的建造物に指定されています。 チカ広場とグランデ広場、ヌエストラ セニョーラ・デ・カンデラリア教会、そして今日では素晴らしいパラドールに改装されているフェリア公爵のアルカサル等があります。
■メリダ
サフラから60キロ。 メリダ市はスペインで最も代表的かつ重要なローマ文化遺跡の残る街。
街全体が遺跡と言えますが、その中で選ぶとすれば、ローマ劇場、闘技場、美術館。 ローマアート国立美術館は、ユネスコ人類文化遺産に指定されているこの街の、あちこちに残る遺跡をより深く理解するための必見の場所。
西ゴート族アート美術館、円形競技場、ロス・テンプロス・デ・ディアナ・イ・マルテ、アラブ時代のアルカサーバ、最も大規模なものとされるローマ橋等も非常に興味深いものがあります。 コンコルディア・デ・アウグトに献納された神殿の廃墟の上に建てられた18世紀の修道院には、ローマ、ムデハル、西ゴート族時代の品々が保存され、今日、パラドールに改装されています。
■トゥルヒージョ
トゥルヒージョ市はスペインの歴史・美術保存指定地域の中でも、最も素晴らしい街の一つといえます。 花崗岩の小高い丘の上に建造され、ケルト人、ローマ人、イスラム教徒、そしてキリスト教徒がその足跡を残してきました。
この街を『征服者の揺りかご』とも呼ぶのは、その時代、この街から600人近い男たちがアメリカ新大陸発見に参加したことによります。 要塞のように城壁を巡らしたこの街にある7ヵ所の門の内、今日、4つの門が完璧な状態で保存されています。
7ヵ所の門を通るどの道も、ピサローの騎馬像の立つマヨール広場まで続いています。 旧サンタ・クララ修道院は、今日、パラドールに改装されており、内部に残る美しい2つの回廊が目をひきます。 その他、サン・マルティン教会、サン・カルロス公爵の館、ピエドラス・アルバス男爵の館、デ・ラ・コンキスタ男爵の館等があります。
■グアダルーペ
スペイン文化圏諸国の祖国であり、人類の文化遺産であるグアダルーペは、世界の聖母崇拝信仰の中心地です。 これは15世紀にアルフォンソ11世王がサラドの戦い後、神への感謝の表示にこの地に寺院を建立したことに始まります。
グアダルーペ修道院はスペイン的芸術の重要な記念碑。 長い年月に渡り、文化や科学、そして多種多様な財宝がその内部に蓄積されてきました。 その広大さで圧倒する建物は、寺院であると同時に要塞でもあるのです。 聖具室、幾つかの礼拝堂、中央祭壇飾り衝立はスルバランの絵で装飾されています。
■カセレス
旧大陸で二番目に歴史的建造物の残る街といわれるカセレス市は、その美しさで訪れる者を驚嘆させてきました。 ユネスコの人類文化遺産に指定されているのも当然といえましょう。
城壁に囲まれる街の中には、教会、塔、館、大邸宅等が昔ながらのたたずまいを見せ、ヨーロッパの中でも最も素晴らしいとされる美術と歴史が息づいています。
マヨール広場からアルコ・デ・ラ・エストレーリァを通り旧市街に入ってみましょう。 そこにはブハコの塔が立ち、何世紀も昔の石の街が広がります。
サンタ・マリア広場には司教館、マジョラルゴの館、エルナンド・デオビエドの館、カルバハル邸が、次にサン・ホルヘ広場に入ると、サン・フランシコ教会、15世紀のベセーラ邸があります。
旧市街の中心に位置するトレーオルガスの館は、14世紀のすらりとした塔を持ち、今日、パラドールに改装されています。 このようなカセレスの歴史的建造物は、そのほとんどがアメリカ新大陸に渡った者たちが持ち帰った富により建造されたものです。
■プラセンシア
『ヘルテの真珠』と呼ばれて知られるプラセンシアは、12世紀、アルフォンソ8世王により造られた街で、歴史・美術保存地域に指定されています。 その歴史はローマ時代に遡り、二重に囲まれた砦の街のたたずまいに、その文化を伝えています。
細い道、塁壁、抜け道、橋、館、教会、エルミタージュ、そしてその中核に、カテドラル・ヌエバ(大聖堂)が建っています。
大聖堂広場に面して首席司祭の邸宅、司教館、裁判所、サンタ・マリア病院があり、その他、モンロイの家、サン・ビセンテ・フェッレール教会・修道院、トレホン伯爵の館、アルゴリァスの家、またプラセンシア市の守護聖人ヴィルヘン・デル・プエルトのエルミタージュ等があります。
■サラマンカ
トルメス川の右岸に位置し、人類文化遺産に指定されています。 サラマンカ大学はスペイン最古で13世紀から続いています。 その正門はプラテレスコ様式の代表的なものです。
中庭、フライルイス・デ・レオン講義室等は一見の価値があります。 アルスオビスポ・フォンセカ会、モンテ・レイの館は、16世紀のもの。 珍しいほたて貝の装飾がほどこされた貝の家は、1600年頃建てられました。
サラマンカのマヨール広場は、スペインで最も美しいマヨール広場の一つです。 また、一つの建物に新旧二つのカテドラルがあり、新カテドラルを通って旧カテドラルに入ったりできる散策が楽しく不思議で魅力ある街、それがサラマンカです。