文化の国 スペイン

何世紀にもわたる時の流れの中で、さまざま文明が交錯し、そして混在してきた国スペイン。

そうした歴史がもたらした文化は、類い希なる多様性と融合の結晶として、イベリア半島という土壌にしっかりと根を下ろしています。
スペインのローマ化の過程は広範かつ、徹底的なもので、これによってスペインは帝国の一翼を担う皇帝、知識人や軍人を輩出し、インフラ設備及び土木技術(道路、鉱山、採石場、水道橋、橋梁)の遺産を受け継ぎ、さらにタラゴナ、バルセロナ、メリダ等の多くの都市が建設されました。

これらの都市では、温泉、大浴場、円形劇場、競技場などが今日に伝えられており、メリダとタラゴナの美術館はこうした遺産の宝庫となっています。 また、クエンカ、ソリア、セビーリャ、マラガにもローマ時代の遺跡が残されています。

ローマ帝国に終焉をもたらしたのは北から入ってきた西ゴート族です。 彼らはトレドに首都を築き、豊穣な文化の種をまきました。

歴史の始まり

約15,000年前に描かれた壁画として有名なアルタミラ洞窟(カンタブリア州)は、この地に数ある考古学的に価値の高い遺跡や洞窟のひとつにすぎません。 メノルカ島にある青銅器時代の石塔や祭壇、霊廟は、素晴らしい状態で保存されています。

また、鉄器時代以降のイベリア芸術は、グレドス山脈のふもとにある風化した動物像「トロス・デ・ギサンド」や、「ダマ・デ・エルチェ」と呼ばれる荘厳な頭像などに見ることができます。

地中海から入ってきたフェニキア人は植民地を作り、アンダルシア(アドラ、カディス)、レバンテ地方(カルタヘナ)やイビサの海岸地域に彼らの文化の刻印を残しました。

次いでギリシア人たちも、レバンテやその南部地域(アンブリエス、ロセス)に植民地を形成。 そして西暦218年のローマ帝国による半島支配によって、鮮やかな文明の花が一気に咲き誇ることになります。

ローマ化

スペインのローマ化の過程は広範かつ、徹底的なもので、これによってスペインは帝国の一翼を担う皇帝、知識人や軍人を輩出し、インフラ設備及び土木技術(道路、鉱山、採石場、水道橋、橋梁)の遺産を受け継ぎ、さらにタラゴナ、バルセロナ、メリダ等の多くの都市が建設されました。

これらの都市では、温泉、大浴場、円形劇場、競技場などが今日に伝えられており、メリダとタラゴナの美術館はこうした遺産の宝庫となっています。 また、クエンカ、ソリア、セビーリャ、マラガにもローマ時代の遺跡が残されています。

ローマ帝国に終焉をもたらしたのは北から入ってきた西ゴート族です。 彼らはトレドに首都を築き、豊穣な文化の種をまきました。

文化のるつぼ:中世

711 年にはイスラム教徒が侵入し、以後8世紀もの長きにわたり彼らの支配が続いていきます。 これにより、スペインはイスラム教とキリスト教の文化を繋ぐ貴重な接点としての役割を果たし、複雑な文化が花開きました。

また、スペインにおいて何世紀にもわたり存在している第3の文化であるユダヤ人社会は、ユダヤ人街、トレドのトランシトとサンタ・マリア・ラ・ブランカ礼拝堂、コルドバの礼拝堂に代表される素晴らしい芸術様式を残しています。

 

キリスト教芸術とイスラム芸術

キリスト教三大聖地のひとつであるサンティアゴ・デ・コンポステーラ。 中世このサンティアゴへの巡礼が人気を高めていく中で、キリスト教はロマネスク派(フロミスタのサン・マルティン教会、レオンのサン・イシドロ(聖堂)、サンティアゴ・デ・コンポステーラ・カテドラル)を生み出します。

さらにロマネスク派はその後、ビザンチンやフランスからの影響を受けて進化し続けました。 そして城や修道院がまさに美の頂点を極めようとするこの大聖堂時代に、大きな影響を与えました。

13世紀から14世紀にかけてはゴシック様式が台頭し、ブルゴス、トレド、レオン、パルマやジロナに建立されたゴシック教会が有名。

黄金の大航海時代

アメリカ大陸の発見やルネッサンスという歴史的転換の中で、16世紀の壮麗な芸術が創造されました。 その代表例はサラマンカ大学のファサード、グラナダにあるカルロス5世の大聖堂と宮殿、マドリッドのサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル修道院などに見ることができます。

モラレスやエル・グレコなどの画家、ベルゲーテなどの彫刻家たちは、17世紀スペイン黄金時代の先駆者として位置づけられています。 彼らに続く宗教芸術の彫刻家には、グレゴリオ・エルナンデス、マルティネス・モンタニェス、フランシスコ・サルシーリョが、また画家にはベラスケス、スルバラン、リベラ、ムリーリョがいます。

建築ではラ・グランハ(セゴビア)、アランフェス、マドリッドの王宮などがこの時代の代表です。
15世紀に入ると垂直様式が優勢となり、セビーリャ大聖堂、サンティアゴ、グラナダおよびトレドの王立病院、サン・ファン・デ・ロス・レィエス修道院(トレド)、そしてインファンタド・バレス(グアダラハラ)に、今日でもその壮麗な様式を見ることができます。

イスラム芸術がその絶頂期を迎えたのは、10世紀カリフ王朝時代のこと。 コルドバのメスキータ(イスラム寺院)とメディナ・アサアールは、この時期を代表する作品です。

タイファル王国によって支配されていた11世紀には、マラガのアルカサバ要塞やサラゴサのアルハフェリア宮殿が、またタイファル王国の後におこるアルモアデ時代には、セビーリャにあるヒラルダの塔や黄金の塔が建造されています。

そして14-15世紀のグラナダにおいては、アルハンブラ宮殿という、アラベスク模様など複雑かつ官能的にまで美しいイスラム芸術の極致が産み落とされました。

そして現代へ

マドリッドのプラド美術館の建築に見られるネオ・クラシズムへの回帰の中、現代美術の先駆者となったフランシスコ・デ・ゴヤという巨匠が登場しました。

19 世紀においては様式折衷主義が台頭し、歴史的テーマを扱ったロマン派風の作品や、生活の光景を描写した作品があらわれました(ベンリューレ、ソローリャ)。

そして 19 世紀末にカタルーニャの建築家であるアントニオ・ガウディ(バルセロナの聖家族教会とグエル公園)によって、モダニズムが生まれました。
今世紀に入ると、シュールレアリズムおよび抽象芸術においては、サルバドール・ダリやホアン・ミロが活躍。 アバンギャルド芸術では、マラガ生まれの天才パブロ・ルイス・ピカソが世界的に高い評価を受けました。

最近の数十年間を見ても、個性的な優れた作品を創出する建築家たち(サート、ボフィル、カラトラバ)、画家・彫刻家たち(タピエス、アントニオ・ロペス、バルセロ、チリーダ)の活躍により、芸術分野におけるスペイン人の功績には目を見張るものがあります。